私は、毎週土曜日6時から名探偵コナンのアニメを見ている。
学生時代にはマンガが発売される度に買って読んでいたものだが、あまりに続きすぎて本棚が限界を迎えかけたあたりでマンガを買うのは断念してしまった。
しかし学生時代、月曜日の世界まる見えテレビ放送前に名探偵コナンのアニメが放送していた頃から大人になった今でもずっと変わること無くコナン君の活躍は応援し続けている。
彼がオープニングテーマにあわせてパラパラを踊っていた時の衝撃は半端なものではなかった。
ちょっと前の、エンディングテーマに合わせて蘭さんや灰原さんまでもが歌を歌ったり踊ったり、主要キャラクター達がバンド演奏を繰り広げていた時の衝撃もなかなかのものだったが、SAWAGE☆LIFEでサタデーナイトだから仕方ないのだろう。
なんの話をしているのか良く分からなくなってしまったが、そんな名探偵コナンを観た後になんとなくチャンネルをそのままにしていて流れ始めた満天青空レストラン。
宮川大輔さんが、畑で採ったばかりの生野菜をかじっては「うまい!!」と叫び、目の前で手作りされた料理を食べては「うんまああぁぁい!!」と雄たけびをあげ、最後に出てくる乾杯メニューをビールとともに食しては「うまあああああああい!!」と、ひたすら料理に対して雄たけびを上げ続ける番組であることは知っている。
農家の奥様や料理人の方たちが作る料理も毎回観ているだけで美味しそうだが、かなり前にレモンバーム農家に行った時に採れたてのレモンバームを生でモシャモシャ食べて「うまぁぁぁぁい!」と言った彼らを見たときに「そんなわけないだろ」と思ってしまって以来あまり真剣にこの番組を観る事は無くなってしまった。
誤解を招かないように弁解させてもらうと、私はハーブが好きだ。
ミント、ラベンダー、ローズマリーからフェンネルやチャイブまでさまざまなハーブを栽培してハーブティーにしたりお菓子に混ぜ込んだりしてきた。
そしてもちろんレモンバームも路地栽培してしまい取り返しのつかないところまで繁殖させてしまったこともある。
その時に「こんなアホみたいにあるんだから食べないともったいないよな」とレモンバームの生の葉っぱを興味本位でモシャモシャと食してみたのだが、雄たけびを上げるほど美味しいものではなかった。
ハーブティーにしたりクッキーに混ぜ込んだりするととても良い香りを放ってくれるハーブだが、生で食べて感動の雄たけびをあげるようなものはなかなか無いと思う。
ハーブ好きな人間である私ですら「ちょっとつらいかな」と思ってしまったハーブの生食を、ハーブ好きの存在をあまり聞かない男性が生でハーブをモシャモシャして本当に感動できるのだろうか。
テレビのタレントでスポンサーとかさまざまな関係もあるから、きっと正直なコメントはできないのだろう。そうか、乾杯メニューのビールを提供している会社の目があるし、何を食べても感動するしかないんだろうな。
私の勝手な解釈をだらだらと述べてしまったが、要するに「この番組は嘘っぽい…。」という目で見てしまっているということだ。
しかし6月3日本日!衝撃の人物が現れる…アスパラ農家のおじさんだ。
冒頭からなんとも自由な言動を繰り広げ、フォローする出演者達。
自慢のアスパラを自分がサクサク収穫してしまい、出演者に「我々にも収穫させてくれ」とさえ言わせてしまう。
挙句の果てには、メインであろう馬肉料理が出てきた時に「馬肉はちょっと…」と正直に馬肉が苦手であることを宣言。
私だったら苦手でも絶対言えない。めちゃめちゃ歯の浮くようなお世辞言いながら美味しく頂くふりをしてその場を取り繕う…が、このおじさんは違う。
その場を離れて、囲炉裏の前でうなだれていたのだ…!!
自信満々で美味しい馬肉料理を振る舞いに現れた人や番組を撮影するためにきっとたくさんいるであろうスタッフさん達、番組をなんとか円滑に進行しようとする出演者達…こんなたくさんの人の前で、こんなに自分に嘘をつかずにいられるものだろうか…!
気づけば私は料理やアスパラよりもおじさんに夢中になって、満天青空レストランにかじりついていた。
おじさんは次にどんなリアクションをするのか、このままのテンションをつらぬくのか、それとも結局お世辞を言ったりしてその場を取り繕ったりするのか…?
なぜかどきどきしながらおじさんを見守っていたのだが、なんとこのおじさんは最後まで嘘をつくことなく自分をつらぬいたのである。
苦手な料理は少し食べたものの「わしは卵とじがいい!」とコメント。
そして番組のメインである乾杯メニューではない「アスパラの卵とじ」がおじさんの為だけに登場して、おじさんはうれしそうにその卵とじを食したのである。
もうただただ「すげぇ!!」の一言である。
苦手なものを使った料理であれど、黙って美味しそうに食べれば万事解決なのにそれをせず、それどころか自分の食べたいものを要求したのである。
こんなことが私にできるだろうか…いや、人の顔色を気にしてそのときの相手の気分の良し悪しを敏感に嗅ぎ取ろう、相手の機嫌が良くなるほうに動いていこうとしてしまう私には到底無理な行動であろう。うん、ビビリな私には絶対できない。
そうして番組はエンディングを向かえたのである。
テレビの前に座った私の心には、なんとも言えない爽快感があった。
それはまるで、レモンバームの香りをかいだ時のような爽快感…それをおじさんの「自分に嘘をつかない」コメントやリアクションが味あわせてくれたのである。
自分に嘘をつかず、相手の顔色よりも自分のやりたいようにやる…これは、リアルが充実するためのヒントになるかもしれない。
すごい…すごいよおじさん!!
とりあえずアスパラが食べたくなったので買いに行くことにします。