私は昔から「ハマったら底なし」タイプの人間で、干し梅にハマった時には小袋に10粒くらい入っている干し梅を一気に6袋食べたりした。マカダミアナッツチョコレートにハマった時も一気に5箱食べたりした。それをお金が続く限り、自分が飽きるか「これ以上続けたら病気になりそう…」と思うくらい体に不調が出るまで延々と繰り返した。
そんな私がカフェにハマってしまった。
カフェの何にハマったのか分からないまま鬼の様に通い続け、出かけた先でカフェの前を通るときも「あ、カフェがある…入りたい…」と欲望に駆られるまま入店した。
カフェにあまり入らないタイプの人と出かけている時はさすがに入店しないのだが「ああ…カフェが…せっかくカフェがあるのに…」と後ろ髪引かれる思いでカフェの前を通り過ぎていた。
最初は純粋に楽しくて美味しくて通っていたカフェ。
いつの間にやら惰性となり、街灯の灯りに引かれていく蛾のように、訳もなくふらふらとカフェに入店してしまうようになっていた。
カフェ通いが趣味で心底楽しくてSNSに画像やコメントをアップしたり日々の生活の潤いとして役立っていたり、飲みたいものがあるから飲みに行く!とかなら全く問題は無いだろう。
しかし私の場合は違った。
カフェに入って商品を注文して受け取るまでは楽しい。
しかし受け取った商品を飲みながらほっこりしていると
「ああ…また1000円近く使ってしまった…昨日もカフェで1000円くらい使ったばっかりなのに…」
と、罪悪感がひょっこりと出てくるのだ。
しかも飲んでいるのは「とにかくカフェに行きたいから来たけど特に飲みたいものがあるわけじゃないから何となく頼んだドリンク」なのだから「わーい!このドリンクが飲めて嬉しいな♪」なんて達成感は無い。それなのにカフェに行くことが止まらない。
ドリンク、フード…目についた「気になるもの」を衝動的に購入しているうちに、店舗専用のカードにチャージした1万円は半年もたたないうちに溶けていき、またすぐに追加のお金をチャージする。
「カフェにつぎ込んだ金額…どのくらいになるだろうか。」
計算すればすぐわかるのに怖くて見たくなくて計算しなかった。しかしカフェ専用カードの残高だけはしっかりと把握しており、ちょっとでも残金が少なくなってきたら光速で入金をした。
「これは自分へのご褒美」「これでリフレッシュしてるから必要経費」などとごまかしの言葉を自分にかけて罪悪感をやわらげた。ご褒美やリフレッシュを必要とするほどの大したことをしているわけでもない。日々フラフラ生きているというのに。
そして帰りの車で、注文したドリンクを飲みきってもいないうちから「次はいつ来ようかなあ。今日カフェ行ったばかりだから明日行くのは気が引ける…だから明後日行こう♪」と次のカフェ通い計画を立ててしまう。
なんとなく、ついついスマホを手に取ってネットサーフィンして止まらなくなってしまうような。
やるべきことがあるのになんとなくテレビをつけて、そのままテレビを切ることもできず熱中して観てしまってやるべきことをする時間がなくなるような。
そんな感覚に似ている。昔祖父の車で耳にして以来何となく記憶に残ってしまった歌の歌詞にあった「わかっちゃいるけどやめられない」である。
長くなってしまったのでズバリまとめると、問題点は「お金」である。
カフェにハマりだしてから、特に大して大きな買い物などをしてもいないのにお金がたまらず下手したら貯金を切り崩していたのである。その時家計簿はつけていなかったが通帳に記入された残高の減り具合とATMに通う回数の増え方でなんとなく危険なことは理解していた。
都会住まいで移動時間は短く済み、必要なものはその都度購入。カフェならカフェを楽しんで帰宅できる環境や、頭を使ってお金を支払える計画性があるならば まだマシだったのだろう。
しかし私は田舎住まい。カフェに行くためには最短でも片道40分近く車を走らせなくてはならず、当然ガソリン代と移動時間がかかる。
更にカフェに行くと1杯500円くらいするドリンクメニュー。フードメニューも注文すれば簡単に1000円近くなる。下手したら超える。
さらにマズかったのが「せっかく都会に来たんだから食材や日用品の買い出しも済ませて帰ろう」である。
カフェの近くには大体大きめのスーパーがある。日頃自宅付近のスーパーでの買い物ばかりなのでついつい足が向いてしまう。
「都会のスーパーなんてあまり来ないからたまにはいいよね♪リフレッシュ☆」
「どれだけリフレッシュしたいんだ私!」と冷静な時には突っ込めるものの、店を目の前にしたらその誘惑に勝てる訳もなくフラフラと入店。
出てくるころには両手にごっそりと買い物袋を握りしめ「いやー!すごいな、見たこと無い物があったし魚とか安かったー!」などと一人ホクホクしながら帰路につくわけである。その中に「今日絶対必要で買うべきだった物」は無いし帰り道にはまた罪悪感が私の頭の中にワラワラと湧いてくる。
日に日に痩せていく財布。
増えていく車の走行距離と買い物回数と出費。
だけどつい吸い寄せられるカフェ。
カフェついでに吸い寄せられてしまう大型スーパー。
帰りには使い過ぎた金額を想像して自己嫌悪。
何となくのカフェ通いで消える数時間。
「お金」もやばいし「時間」もカフェと買い物で消えていくと気づいて一瞬焦る。
でも「やっぱりカフェに行きたい!」と、それを繰り返す日々。
値段や提供時間や移動距離を考えてコンビニコーヒーの利用にシフトしてみたけど、結局車を走らせることに変わりは無いしコンビニにはさらに魅惑的なスイーツがラインナップ豊かに並んでいるので余計に出費が増えて完全に逆効果だった。
…このままでは金銭面もやばいし健康面もやばい。
甘い物がしんどくてもメニューから甘さの度合いは分からない。「甘さ控えめで」とかいちいち言うのも面倒だからそのまま注文してしまい鬼のように甘い物を飲み食いしたりする。さらには、胃が痛いのにコーヒーを飲んでしまって手が少し震えるような動きをしている時もある。これを週3~4回とかやってたら病院送りにならないか?
さすがに危険を感じてきて、ちょっと冷静に自分の行動や傾向を振り返ってみた。
●何故私はカフェに向かってしまうのか。
↓
オシャレな雰囲気や飲み物食べ物を知りたい。
店員さんの丁寧な接客を味わっていい気分になりたい。
カフェに行けば私の何かが変わる気がする。
●何を求めているのか。
↓
多分だけど「非日常」。
いつも飲めない「丁寧に淹れられたコーヒーにふわっふわの泡」とか。作れないし。
●カフェの何が嬉しいのか。
↓
普段飲み食いできないおしゃれなものが体験できる。
いい香りのコーヒー、丁寧な接客にたまっていくポイント、もうたまりませんなぁグヘヘヘ…。
●このままの生活を続けて大丈夫なのか。
↓
大丈夫なわけないだろ!(自業自得だけど)お金の出て行き方が尋常じゃないし、最近コーヒーで手が震え出したし!!
●過去の行動に何か共通点は無いのか。
↓
…とにかくミルクの入ったメニューばかり注文してるなあ。
あとホイップクリームが乗ったら心が尋常じゃなくときめくなあ…。ホイップが乗っているヤツは量を増やしてもらったりとかしてるし。
逆に「本日のコーヒー」とかのブラックコーヒーみたいなやつとかは一切注文しないなあ…注文してもカスタムしてホイップのせたりするし…
そういえばスタバとかでミルクにホイップ載せてキャラメルソースかけた「キャラメルスチーマー」ばっかり注文してた時期も長かったなあ。
…あれ?私ってば、コーヒーよりもミルクやホイップ目当てで通ってる?
もしも、カフェのメニューからミルクやホイップが全部なくなったら?
「…多分カフェには行かないと思う」
「カフェで注文するドリンクはとにかくミルクやホイップが入っている」という共通点に気づいた私は閃いた。
「ならば、そのミルクやホイップを自宅で堪能できるようにしてしまおう!」
即座に私はスマートフォンで「再現レシピ」を検索した。
必要そうなアイテムは買いそろえた。
そして自力で「カフェメニュー」を全力で再現してみた。
素人の私が初めて作ってみたカフェメニュー…飲んでみると思いの外美味しくてびっくりした。
いつの間にか自分でコーヒーを淹れることが楽しくなり、YOUTUBEなどでドリンクづくりのレシピを見るようになった。抹茶メニューも挑戦するようになって、クリーマーで細かい泡を立てられるようになってきた。
甘いものが飲みたいときには味見しながら甘くできるし、甘みがいらない気分の時には一切甘味を入れないこともできる。ほうじ茶ラテも作れるようになったし、大体のレシピはどこかの天才が再現技を編み出してくれておりほぼ何でも製作可能になった。
「家で好きなだけ・好きなように、ミルクやコーヒー・フードが堪能できる」効果は非常に大きかった。
みるみるカフェに通う回数が減った。それと同時にスーパーで浪費する回数も減った。
以前は食料品や日用品を「田舎だから買い物行くの大変だしまとめ買いしとかなきゃ」とまとめ買いしたのにカフェにちょこちょこ出かけたついでにスーパーでもちょこちょこと物を購入し、頻繁にお金を使っていた。
しかし今では「まとめ買いのみ」でほぼ1週間過ごす余裕が出来て、移動や買い物に体力や時間やお金をつぎ込まなくても済むようになった。
その分、スコーンなども焼くようになった。関係ないけど夕食の支度も以前よりも段違いに気合が入るようになった。「カフェに行かなきゃ」という衝動が和らいで違うことに頭が使える余裕ができ、体力も残るようになったからだろうか
以前は「カフェの新作!飲みにいかなきゃいけない!!急がなきゃ!!!」となんだかガツガツしていたのだが「飲めなかったら自分カフェがある」という余裕が私を落ち着かせてくれる。
まだまだ少ないけど、貯金もできるようになってきた。
日々落ち着いて「カフェの為ではない」自分の時間を過ごせるようになってきて本当にうれしく思う。
もちろん今もカフェが大好きなことに変わりはないけど、自分を見失っていた以前とは違って「飲みたい!」と思うものや「買いたい」と思う物が発売されたときにのんびりと楽しみに行く心の余裕ができた。
長すぎるので「その②」に分けることにします。
「その②」では「ミルク好きでカフェ通いが止まらなかった私」による「自分カフェ/おおざっぱ」の「泡がのったミルクコーヒー」を紹介したいと思います。