夜中に目が覚めて、用を足して飲み物を用意して部屋に戻った。
部屋を煌々と照らす蛍光灯では無く、しんみりとオレンジ色の光を放つ電球の方の照明を点けて何となく床を見ると黒い点々がうごめいている。
「…なんじゃこりゃあ」
嫌な予感がして蛍光灯のスイッチに手を伸ばし、蛍光灯の強烈な光でガツンと室内を照らすと…
蟻たちが行列を作って室内を縦断しようとしていた。
「うおおおおおお!!?」
思わず男性のような声が出る。
何故なら、蟻たちの大名行列は私達が布団を引いているその下を経由していたのだ。
部屋が狭くベッドが置けないため、床に布団を敷いて寝るスタイルが完全にあだとなった。
「こ…これじゃあ布団が蟻まみれになってしまう!!」
何としても蟻を殲滅する必要があるが、時間にして深夜1時。
そんな時間に掃除機で蟻を吸い込むわけにはいかない。
かといってこのまま放置していて眠れる訳もない。
出来れば掃除機で蟻を吸引して生け捕りにし(サイクロン掃除機なので生け捕りにできる)外に放り出し、できるだけころさずに対応したいところではあるものの、義両親も寝ているし音を立てることはできない。
蟻退治用のスプレーなんて無い。
でもゴキブリ退治やハチ退治用のスプレーなんてかけてたら部屋がベタベタになって深夜に掃除までしなきゃいけなくなる。
仕方がないのでブレーキクリーナーという車などのパーツ洗浄に使うスプレーを持ってきて、起きてきた夫と共に部屋を換気しながら蟻たちにスプレーしていく。
(ブレーキクリーナーの悪い使い方なのでマネしないように)
ブレーキクリーナーを大量に噴射するとすごい有毒そうだし蟻たちも噴射時に起こる風で吹っ飛んでしまうので、ごく軽くスプレーを押し蟻1匹にかかる程度の範囲で噴射する。
大量の蟻にチビチビとブレーキクリーナーをかけていく。
部屋に行列を作っている蟻を倒しきったら今度は布団を引っぺがして布団の下の蟻たちを殲滅していく。
内職のような、地道な作業。
しかし倒しても倒しても次々と蟻が湧いてくる。
しかもよく見ると蟻の行列は部屋の外まで伸びている。
できるだけ殺生はしたくなかったけれど、とにかく蟻を倒し続けた。
ブレーキクリーナーはすぐに乾いてくれるので、部屋の掃除はとりあえずしなくても大丈夫そうだ。
ちょっと安心していると部屋の隅に私の大嫌いなアイツが居た。
蜘蛛だ。
どういうことだ。蟻退治だけでいっぱいいっぱいだというのに。
なぜこのタイミングでこの蜘蛛は現れたのか。
夫はたった今、出勤の為に蟻退治から離脱してしまったというのに。
まさか蟻退治はただの雑魚戦で、本当のボス戦はこの蜘蛛だったというのか。
蜘蛛が大嫌いで姿を見るだけで飛び上がって、そのあと段ボールや紙袋に書かれていたりする「米」とか「水」っていう字まで蜘蛛に見えて怯えてしまうこの私が…
蜘蛛と一対一で戦わねばならないのか。
蜘蛛を見た瞬間ドッと嫌な汗をかき蟻を倒す手が止まってしまっていたが、もう窮鼠猫を噛む状態でやけっぱち精神の私は必死で蜘蛛を倒した。
蟻を退治し続けて蜘蛛まで退治し必死でナキガラを片づけ、ようやくひと段落ついたのは夜中の3時を回っていた。
…すっっっごい疲れた!!
布団を元に戻して倒れこむように寝た。
…蟻退治を済ませてからどれくらい経った頃だろうか。
腕がかゆい。
ついでに足もかゆい。
チクチクするようなかゆみがある。
オカシイと思って起きて電気をつける。
布団の下を通って枕元をかすめるように蟻の行列が伸びていた。
私が寝ていた布団の中にも蟻が2,3匹いた。
私はこいつらにかじられたのか。
寝起きに蟻退治を始める元気は無かったので用を足して朝ご飯を済ませて一通りの家事を終わらせてから蟻と向き合った。
正直うんざりしていた。
寝ている間に蟻にたかられるとは思っていなかったし、朝食を用意して部屋に戻り蟻の行列を避けたところに座って朝食を摂っていたら行列からはぐれた蟻に足の指をかじられたのである。こんな不愉快極まりない朝のひとときがあるだろうか。
考えれば考えるほどイライラした。
「もし移住する日が来たら、1階は車庫の物件にしてやるからな!!!」
布団を1枚ずつ、バサバサとふるって布団にたかっている蟻を振り落とす。
そして布団は安全な場所へ移動させ、私が放置している間に数を増した蟻の行列の出所を探る。
どうやら、家の角っこの木の継ぎ目にある隙間から発生しているようだ。
その木の継ぎ目にアクセスできるように家具を移動。
家具を置いていた場所は髪の毛やペットの毛・ホコリなどが積もって酷い有様になっていたのでついでに掃除機をかける。
「ふはははは!!もう家族は皆起きているからダイ〇ンが使えるんだよ蟻ども!!」
ハウスダストと一緒に蟻も吸引しまくる。
蟻は慌てて逃げ始めるけれど、その動きよりも人間の方が早い。
「人間の恐ろしさを教え込んでくれるわーハハハハ!!!!」
片っ端から〇イソンで蟻を生け捕りにしていく。
透明なタンクの中でアワアワとうごめく蟻。
通常サイクロン掃除機は中でゴミが回転するけれど、ハウスダストでいっぱいの為ゴミは回っていない。蟻も回転で苦しむことは無さそう。
あとで逃がしてやるからなぁ!待ってろよハハハハ!!!
目につく限りの蟻を片っ端から生け捕りにしたら、隙間に木工用ボンドを流し込む。
そして表面の凹凸を指でならす。
隙間をふさいだら家具を戻す。
そして急いで家の周囲の地面を確認して、蟻の行列が無いかどうかチェック。
案の定、蟻が入って生きていた場所付近に行列ができていたのでここは容赦なく待ち伏せ効果のある殺虫剤をスプレーした。
そして部屋に戻って中央に陣取り、生き残ってパラパラと現れる蟻たちを生け捕り。
ある程度蟻が出てこなくなったら生け捕りにした蟻たちを屋外の遠い場所に開放した。
解放された蟻たちは「ひどい目にあった!」と言わんばかりにワラワラと逃げて行く。
こうして蟻を退治して対策も行ったところ、蟻が部屋に登場することは今のところ無くなった。
今回の件で私が編み出した蟻退治方法は
①目に見える蟻は片っ端からダイソ〇で生け捕り。(もしくは殺虫剤)
②蟻の出所を探って、その場所をふさぐ。
③家の外周もチェックして殺虫剤をまいたり対策する。
④蟻をじっとみていると気持ち悪くなったりイラついてきたりするので「巻き散らかしたごま塩」を掃除するんだくらいのテンションで冷静に対処する。
…上記の4つかなあと思います。
あと、家具を動かして床や壁がハウスダストや蜘蛛の巣で汚れていたらついでに掃除するとなんだか気持ちがスッキリしました。
私はブレーキクリーナーと木工用ボンドと虫こないアースの網戸や窓にまける殺虫剤を活用しましたが、ちゃんと蟻専用スプレーも調達しておこうかなあと思います。