ねぇ、リアルってどうやって充実させるの?

リア充になる方法を模索する人間(女)のブログ(雑談大量!)

ー★思い付き小説「アラウンド40の姫君 -自分は一体何者なのかー」

「宇宙人…式?」

 

訳の分からない話をされて戦意が削がれた。

それに気付いた立花は、私の後頭部を鷲掴みにしている男に向かって左手でヒラヒラとサインを送った。

 

後頭部を握る手の力が緩み、私はやっと後頭部鷲掴みの刑から解放されて地面に足をつくことができた。そしてそのままふらふらと地面にへたり込んだ。

 

私の目の前に立花が来てしゃがんだ。

目線を合わせながら話しかけてくる。

 

「何をそんな不思議そうな顔してるのー?山野さんだって宇宙人じゃん。まぁ 超 がつく戦闘型の種族だし、あまりに凶暴過ぎて全員残らず処刑されてとっくの昔に滅んでる筈だったんだけど。」

 

…最強の戦闘力の宇宙人で希少。思わず◯魂の◯楽ちゃんの姿が浮かんだ。彼女は可愛い。そういえば実写版で◯楽ちゃん役をしてた橋本◯奈ちゃんも可愛…いやそんな事を考えてる場合じゃない。

 

ここは現実だし「普通に見えてたけど実はすごい力を秘めてました!」だなんて、SFの真似事にしては設定がありきたりすぎるし、世間的にはBBAだのアラフォーだのと鼻で笑われることもありえる年齢の自分が実はそんな「中二病的なプロフィール持ってました!」って…普通そういうのは少年・少女と呼ばれる年代くらいまでじゃない?こちとら中年と言われる年代だぞ?無理がありすぎるだろう。

 

これはアレか。ドッキリか。私がこの設定を信じて乗っかって行ったら「チャッチャラ〜」とかいいながらドッキリって書いた看板を持った人が出てきてみんなに「そんなのあるわけないじゃんお前ただの人間だし馬鹿じゃない?」って笑われて全国的に辱めを受けるようなやつか。

 

私みたいな一般人を騙して何のメリットがあるのかはわからないけど、実は立花は何かの劇団に属していて後ろのデカイ男たち5人も劇団の人間で全力の演技で私を騙しにかかっているんだ。そうだ、そうに違いない!

 

疑心暗鬼で頭がいっぱいになっている中ふと我に返ったら、立花が私のカバンを勝手に漁ってスマホを取り出していた。

 

「ちょっと!!人の鞄!勝手になにやってんですか!!」

 

今まで上司と部下の間柄だったから思わず敬語が出る。しかしかつてのように敬う気持ちは微塵もない。ただただ「こいつマジ気色悪い!」という気持ちしかない。

 

ていうか勝手に人のスマホ弄ろうとしてるし…。

バーカ!今そのスマートフォンはバッテリーが無いんですよーだ!!

 

と嘲笑いながら立花の行動を見ていたら、いきなりパッとスマートフォンの画面に明かりが灯った。

 

「えっ!なんで!?バッテリー無かったはずなのに…」

 

ヤバイ!まさか電源が入るとは!!いくら彼氏や友達1人もいなくて家族しかアドレスや電話番号入ってないとはいえ写真とか色々入ってるしこの変態男に見られたくない!見られるわけにはいかない!!

 

反射的に、立花の手からスマートフォンをひったくるように奪い取る。

するといきなりスマートフォンの画面が暗転してバッテリーが無いと表示がでて、そのまま画面が真っ暗になった。

 

「もー!せっかく僕のエネルギーを変換してスマホ動くようにしてたのにー。心配しなくても勝手にスマホの中身を見たりしないよー!貸して!!んで山野さんの親御さんに電話かけてみよ?自分が何者なのか知らないみたいだからちゃんと知っておこう?」

 

呆れた顔をした立花に畳み掛けるように言われて思わず承諾した。スマートフォンを立花に手渡す。

すると再びスマートフォンに電源が入った。

それを確認した立花は、こちらに画面を向けて操作できるようにしてくれた。

 

いつも通りパスコードを入力。

パスコードを入れる時、立花はちゃんとよそを向いてくれた。一応見ないように配慮してくれる心は持っているらしい。

 

その瞬間、着信の画面になった。母だ!

私を心配して、ずっと連絡をしてきていたんだろう。

 

大急ぎで電話を取った。すかさず立花がスマホを右耳に当ててくれた…と思ったら。

 

「ちょっとアザミ!大丈夫!?何処にいるの!!?」

 

母のめちゃめちゃ大きな声が聞こえてきて。

スマホは立花の手によって固定されてるから、私は電話から弾き飛ばされるように吹っ飛んだ。

立花もあまりの声の大きさに目をパチパチさせて驚いている。

 

普段こんなに大きな声を出す人じゃないからよっぽど心配していたのだろう。

申し訳なくなって謝った。

 

「ごめん、お母さん…心配かけて。」

 

しかし謝ったはいいもののここからどうやって話を進めるか思いつかなくて固まった。

 

私って宇宙人なの?

 

人間じゃないの?

 

 

イヤイヤ…そんなアホみたいな事聞けるか!?どう考えても「アンタ何馬鹿な事言ってんの?そんなのいいからさっさと帰ってきなさいよ」ってなるのがオチだろ!?

 

私がフリーズしたことにより空気を読んだ立花が喋り出した。

 

「山野さんのお母様ですね。私、山野さんの職場の同僚で立花葵と申します。」

 

あれよあれよと言う間に、挨拶からどんどん会話が進んでいき、私が無事な事から今仕事で遠くに来ておりトラブルが起きて連絡もできないまま泊まりになってしまったという母を安心させるための嘘まで、立花の口からスラスラと言葉が紡ぎ出されていった。

 

…さすが、腐ってても変態でも一応上司。

どんな状況でも流暢に喋ってその場をまとめる力量は備えている。

 

母はあっという間に納得してくれた。

ほっと胸をなでおろしたのもつかの間、立花がさらりととんでも無いことを言った。

 

「ところで、山野アザミさんは宇宙人ですよねぇ?それも戦闘型の種族…地球の言葉でいうならアルストロメリア族ってところですかねー?しかも王族の血を引いている。…違いますか?」

 

「…なんっっちゅう訳わからんことを、人様の親に言うとんねん!!」

 

関西人じゃ無いのに思わずエセ関西弁でツッコミを入れてしまった。そのままの勢いで私は2人の電話に割って入った。

 

「おっお母さん!!ごめんこの上司SFオタクで頭が狂ってるの!気にしないで!私は元気だから!ちゃんと人間だし!!」

 

母は黙っている。なんかヤバイ、気まずい。

なんて言い訳したら「あぁ、冗談だったのね」と納得してくれるだろうか。早くなにか言わなきゃ。でもなんて言おう?

 

沈黙を切り裂いて母が言葉を発する。

 

「アザミ…お母さんアンタに『アザミは人間だよ』なんて一言でも言ったことあったかしら?何処をどう見て『自分は人間だ』って思ってたの?」

 

…母まで一体どうしたーーーーー!!?

頭の中が真っ白になる。もう言葉が出てこない。

本当に何のドッキリ?何のためのドッキリ!?誰得!!?

 

混乱していると母がさらに語り始めた。

 

「アザミは私が地球からちょっと離れた惑星で暮らしてる頃にできた子よ。相手はやんちゃだけど素敵な人で…王族だなんて知らなかった。」

 

なにこの展開!?

私は人間じゃないの!?んな訳ないじゃん!私は父親も妹も普通にいるけど!?じゃあ私のお父さんは何?妹はどういうこと!?冗談にしても面白くなさすぎる!

 

母が言葉を続ける。

「アザミを作ってしばらくしたら急に私達の種族が危険だからって処刑対象になってみんな消されたわ。そんな時に本当のお父さんの部下…あなたの今のお父さんが私とアザミを連れて地球まで一緒に逃げてくれたの。妹は今のお父さんとの間に…できちゃった♪」

 

…できちゃった♪じゃねーよ…。

 

馬鹿馬鹿しくて、半信半疑のままとりあえずその話に乗っかってみた。

「なんでそれをもっと早く教えてくれなかったの?」とわざとらしく聞いてみた。

 

母は淡々と「最初は自分たちが宇宙人であることを伝えようと思ったが、よく考えたらこの地球で自分のことを人間だと言っている連中だって、自分たちが元々アルストロメリア族として住んで居た星から見たら十分宇宙人だし、よく見たら人間の姿を借りた宇宙人も多いし『人間である定義って何だろう?人間だという証拠って何だろう?』『ていうか全員宇宙人みたいなもんじゃん』と思って何も言わなかった。私が勝手に何か気づいたらそれで良いやと思っていた。」との事。

 

 

精神的なダメージがデカすぎてもうなんも言えない…言う気力がない…。

 

まだ母の声がする。

「あ、だから宇宙的な暗号にしてギュッと縮めて地球語に変換したから ヤマノアザミ って名前になってるのよ!本当のアザミの名前は王族の血を引いてるから物凄く長いのよ!めんどくさいから一回しか言わない、覚えてね?◎△$♪×¥●&%#◎△$♪×¥●&%#…」

 

…なんか地球上になさそうな言語喋り始めたー!!

もう勝手にしてくれーーーー!!

 

…私は何もかもが面倒くさくなって、スマートフォンの通話終了ボタンを押した。